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2024.01.19
モルタル外壁は、優れた機能性から長きにわたり多くの建築物に採用されてきました。遮熱性や耐火性に優れ、デザインの自由度が高い一方で、ひび割れや汚れ、メンテナンスの必要性など、注意すべき点もあります。本記事では、モルタル外壁の基本的な特徴からメリット、デメリット、そして適切なメンテナンス方法に至るまで、幅広い情報を提供します。
目次
モルタル外壁とは、砂、水、セメントを混ぜ合わせたモルタルという素材で作られる壁を指します。
1980年代まで日本の建築物に広く採用されていましたが、現在では新築物件の外壁材として使われることは珍しくなっています。窯業系サイディングをはじめとするサイディングが主流となっているからです。しかし、継ぎ目のない美しい仕上がりを好む方々には、今でも根強い支持があります。
モルタル外壁の主な仕上げ方法(塗装の仕上げ方法)として、次の4つが挙げられます。
各仕上げ方法の詳細について見ていきましょう。
リシン仕上げとは、塗料と砂を混ぜたものをスプレーガンで壁に吹き付ける仕上げ方法です。
リシン仕上げには、吹き付けと掻き落としの二つの技法があります。リシン吹き付けは、素材を壁に吹き付けたまま乾かし、表面に細かい砂粒のようなテクスチャーを持たせる技法です。リシン掻き落としは、吹き付けた後にブラシなどで表面を掻き落とします。高級感のある仕上げりとなるところが魅力的ですが、費用はリシン吹き付けの方が安価であることもあり、リシン吹き付けの方が選ばれることが多いです。
スタッコ仕上げは、塗料、セメント、骨材を混ぜた素材をスプレーガンで外壁に吹き付ける仕上げ方法です。その凹凸が魅力的で、立体感のある仕上がりを生み出します。スタッコ仕上げには、吹き放し仕上げとヘッドカット(凸部処理)の二つの技法があります。前者は外壁の素材を吹き付けたまま固める技法であり、後者は吹き付けた後にローラーや͡コテで押さえつけるという手間がかかった技法です。
スタッコ仕上げは、塗膜に厚みがあるため耐久性が高く、長期間にわたる保護効果が期待できます。しかし、凹凸のせいで汚れが付着しやすく、定期的な洗浄が必要になる点には注意が必要です。
吹き付けタイル仕上げは、複層仕上げ塗材を3回にわたってスプレーガンで吹き付ける仕上げ方法です。リシン仕上げ、スタッコ仕上げのように砂利や骨材が素材が混ざらないため、外壁の表面が滑らかになるところが特徴です。
左官仕上げとは、珪藻土や漆喰といったペースト状の素材を、職人がコテで外壁に塗っていく仕上げ方法です。自然素材を使うため、アレルギーの予防に効果的です。また、吸湿性、放湿性、消臭効果の3点も期待できます。
しかし、左官仕上げは特に熟練した技術が求められるため、職人の腕前がそのまま仕上がりに反映されます。技術に信頼のおける信頼を探して依頼すると良いです。また、費用も高額になることも念頭に置いておきましょう。
モルタル外壁は、その優れた特性により、長年にわたり多くの建築物で採用されてきました。モルタルの外壁材として優れている点は、次の4つになります。
それでは順番に見ていきましょう。
金属製の外壁材と比較すると、モルタル外壁は太陽光による温度上昇が少なく、夏場の冷房にかかる経費を削減できます。外壁に遮熱効果のある塗料を塗れば、温度上昇をさらに防げます。これにより、エネルギー効率の良い快適な住環境を実現することができます。
サイディング壁に見られるような継ぎ目がないため、モルタル外壁は劣化しづらく、シーリング材の補修が不要という利点があります。これにより、メンテナンスの手間とコストを削減することが可能です。
モルタルの素であるセメント、砂、水は、不燃性の材料であるため、モルタル外壁は耐火性に優れています。火災時の延焼を効果的に防ぐことができるため、安全性の高い住環境を保てます。
リシン、スタッコ、吹き付けタイル、左官仕上げなど、様々な仕上げ方法があり、それぞれが建物に独特の風合いや個性をもたらします。デザインやカラーにこだわって塗装を楽しめます。
モルタルには優れた点が多くある一方で、外壁材として選んだ際にはどうしても向き合わなければならないデメリットがあります。
主なデメリットは、次の3つです。
それでは順番に見ていきましょう。
ひび割れが発生しやすい点は、モルタル外壁の大きな課題の一つです。継ぎ目のないモルタル壁は、気温や湿度の変化、地震など外部からの影響を受けやすく、これが原因でひび割れを引き起こしやすいと言われています。ひび割れが進行すると、外壁から水が侵入し、建物の寿命を縮める可能性があります。
モルタル外壁の仕上げ方法として、リシン仕上げやスタッコ仕上げなど、表面に凸凹ができる方法があります。これらの方法を選ぶと、汚れが付着しやすくなってしまいます。特に湿気の多い地域ではカビやコケの発生が深刻な問題です。汚れは外壁の美観を損ねるだけでなく、定期的なメンテナンスが必要となり、手間とコストがかかります。
コスト面でも、モルタル外壁は他の外壁と比較して高額になりがちです。材料の少なさや複雑な工法が要因で、施工には高度な技術が必要であり、その分人件費も高くなります。また、手作業が多いため工期も長くなりがちで、これもコスト増に繋がります。
モルタル外壁の仕上がりには職人の技術力が大きく影響します。左官仕上げだけでなく、リシン仕上げ、スタッコ仕上げ、吹き付けタイル仕上げ等のスプレーガンを使う塗装もまた、相応の技術が求められます。ムラなく均一に塗料を吹き付けられるかは、職人の技術にかかっているからです。業者や職人によって仕上がりにばらつきが出ることは避けられません。高い費用を支払ったにも関わらず、期待通りの仕上がりにならないリスクもあります。
モルタル外壁のメンテナンスは、建物の美観と耐久性を維持するために重要です。メンテナンスの必要性は、外壁の劣化状況によって異なりますが、一般的には新築から5~10年、再塗装後は10~15年ごとにメンテナンスを検討すると良いでしょう。劣化のサインとしては、変色、カビ、チョーキング(外壁を触ると白い粉が付く現象)、ヘアークラック(細いひび割れ)などが挙げられます。
モルタル外壁のメンテナンス方法には、再塗装やカバー工法があります。再塗装は、外壁の表面を新たに塗り直すことで、外観を美しく保つと同時に、外壁の保護も図れます。カバー工法は、新しい外壁材を既存のモルタル壁の上に重ねる方法で、特にサイディングを使用することが多いです。
メンテナンスに使用する塗料には、水性シリコン塗料や高弾性防水塗料、フッ素樹脂塗料などがあり、それぞれ特徴が異なります。水性シリコン塗料はコストパフォーマンスに優れ、高弾性防水塗料はひび割れ対策に適しています。フッ素樹脂塗料は耐用年数が長く、長期間にわたる保護が期待できます。
DIYでのメンテナンスも可能ですが、広範囲の作業や専門的な技術を要する場合は、専門の業者に依頼することをおすすめします。業者選びの際は、複数の見積もりを取り、施工内容やアフターサービスを比較検討することが重要です。
モルタル外壁のメンテナンスを適切に行うことで、建物を長期間保護し、美しい外観を維持することが可能です。定期的なチェックと適時のメンテナンスを心がけましょう。
1980年代は主流だったモルタル外壁ですが、近年ではサイディング外壁に取って代わられています。ここでは、サイディング外壁の特徴とメリット、選ばれる理由について見ていきましょう。
サイディングは、耐久性に優れた板状の材料を壁に取り付ける外壁材です。窯業系、金属系、木質系、樹脂系など、多様な素材とデザインがあり、建物の外観を自由にデザインすることが可能です。
サイディングの最大のメリットは、メンテナンスの容易さとコストの面です。定期的な塗り替えやシーリングの補修を行うことで、長期間にわたり美観を保つことができます。また、施工が容易で工期が短縮されるため、コストを抑えることができます。適切なメンテナンスを行うことで40年程度まで寿命を延ばせるので、耐久性という点についても優れていると言えるでしょう。
サイディング外壁が選ばれる理由について見ていきましょう。
サイディングは豊富なデザインと色彩が特徴で、住宅の外観を個性的に演出できます。レンガ調や木目調など、様々なテクスチャーで建物に独特の雰囲気を与えることが可能です。
プレカットされた板材を使用するため、施工が容易で、工期の短縮が可能です。これにより、建設コストを低減できるとともに、建設スケジュールの柔軟性が高まります。
定期的な塗り替えや目地のシーリング補修により、長期にわたって外壁を保持することができます。さらに、耐震性にも優れており、軽量ながら強度が高いため、地震発生時の安全性を向上させることができます。
サイディングは、様々な気候条件に対応する耐候性を持っています。耐水性や耐熱性、さらには耐震性にも優れているため、多様な環境下での使用に適しています。
これらのメリットにより、サイディングはモダンで機能的な住宅の外壁材として、広く選ばれるようになりました。特に新しい住宅の建設や既存住宅のリノベーションにおいて、サイディングはその便利さと経済性から高い人気を誇っています。
モルタル外壁は、継ぎ目のない美しい仕上がりや高い耐火性能で知られ、日本では1980年代頃に非常に高いシェアを誇っていました。しかし、サイディングの普及により、コストパフォーマンスの面で劣るとされ、その人気は徐々に衰えています。それでも、特有の美しさを求める人には根強い支持があります。
モルタル外壁はデザイン性に富んでおり、職人による様々な仕上げが可能です。リシン仕上げ、スタッコ仕上げ、吹き付けタイル仕上げ、左官仕上げなど多彩な方法があり、建物に独自の風合いや個性を与えます。また、金属製の外壁材と比較して壁表面が熱くなりにくいため、夏場の室内温度の上昇を抑え、冷暖房の負担を軽減します。耐火性も高く、安全性の高い住環境を提供します。
しかし、デメリットとしては、乾燥と湿潤を繰り返すことでひび割れやすく、特に地震や地盤の沈み込みなどで建物に力がかかると、モルタル壁にひびが入ることがあります。また、表面に凹凸があるため、汚れが溜まりやすく、清掃が困難になることもあります。さらに、施工する職人の技術や経験に依存する部分が大きく、仕上がりに差が出やすい点も考慮が必要です。工期も比較的長く、施工コストが高くなる傾向があります。
モルタル外壁の魅力と欠点を踏まえた上で、これらの特性を理解し、建物のデザインや使用環境に合わせた選択をすることが大切です。美しさと機能性を兼ね備えたモルタル外壁は、適切なメンテナンスと共に、長期間にわたってその価値を保つことができます。